令和8年版 厚生労働白書 特集は医療・介護・福祉の現場の人手不足と、テクノロジー活用による生産性向上
この記事のまとめ
- 厚生労働省の令和8年版厚生労働白書が9月29日に公表され、第1部のテーマは医療・介護・福祉の現場です。
- 白書は2025年度の有効求人倍率を、介護3.98倍、看護2.10倍、全職業計1.10倍と記載しています。
- 白書は2025年度の平均給与額を、介護職員31.4万円、全産業平均39.6万円と記載しています。
- 白書は介護保険料を第9期の全国平均6,225円、2040年には約9,200円になる見込みと記載しています。
- 白書は年次行政報告で新しく何かを決めるものではなく、次期の介護保険事業計画は2027年度から始まります。
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9月29日の閣議で報告し、同日公表 第1部は「現場で働くこと」がテーマ
厚生労働省の報道発表資料は、日付を「令和8年9月29日(火)」として、次のように書いています。
厚生労働省は、本日の閣議で「令和8年版厚生労働白書」(令和7年度厚生労働行政年次報告)を報告しましたので、公表します。
(出典:厚生労働省「「令和8年版厚生労働白書」を公表します」)
同じ資料は、構成とテーマを次のように説明しています。
令和8年版厚生労働白書は、今年のテーマについて掘り下げる第1部と、厚生労働行政の施策をまとめた第2部の2部構成となっています。その年ごとのテーマを設定している第1部では「これからの医療・介護・福祉の現場で働くことを考える」と題して、テクノロジーの活用など生産性向上に取り組みながら、質の高いサービスの提供を目指す現場の取組みに着目しました。
(出典:厚生労働省「「令和8年版厚生労働白書」を公表します」)
第1部は、第1章「医療・介護・福祉を支える現場の現状と、2040年を見据えた課題と対応の方向性」と、第2章「2040年に向けた、医療・介護・障害福祉の現場における取組み ― テクノロジー(ICT、AI、ロボット等)の活用による生産性向上 ―」の2章立てです(本文ページの目次)。なお白書は、第1部で使う「福祉」について、基本的に障害福祉を想定した用語だと注記しています。
第1部の「はじめに」は、調査結果を次のように書いています。
医療分野や介護・福祉分野における将来の担い手不足に不安を感じる人は 7 割を超えており、現場を支える担い手の確保をめぐり、多くの国民が将来に不安を感じている状況にある
(出典:厚生労働省「令和8年版厚生労働白書」第1部 はじめに、2ページ)
同じページの注には、調査の数字が書かれています。
令和 7 年度少子高齢社会等調査検討事業報告書によると、医療分野の将来の担い手不足に不安を感じる人は 74.5%(「不安を感じる」と「やや不安を感じる」の合計。以下同様。)であり、年齢区分別では 20~29 歳が 58.3%、30~44 歳は 73.6%、45~59 歳は 76.6%、60~74 歳は 82.1%、介護・福祉分野における将来の担い手不足に不安を感じる人は 81.3%であり
(出典:厚生労働省「令和8年版厚生労働白書」第1部 はじめに、2ページ)
医療18万施設・介護213万人・障害福祉132万人を、限られた人材で支える
概要版は、三つの分野の規模を次のようにまとめています。
◆ 医療サービスは約18万施設で医師約33万人・看護職員約175万人をはじめとする多様な専門職が支え、介護サービスは約1.4万施設の他、訪問系や通所系を中心に多数存在し、約213万人の職員が支えている。また、障害福祉サービスにおいても約132万人の職員が多様なサービスを支えており、全産業に占めるこれら分野の就労者数の割合も年々増加傾向。
(出典:厚生労働省「令和8年版厚生労働白書 概要」3ページ)
本文の注は、全就業者に占める医療・福祉の就業者の割合について、2005年の8.7%から2025年には13.9%に上昇したと書いています(第1部第1章、9ページ)。
有効求人倍率は介護3.98倍、看護2.10倍、全職業計1.10倍(2025年度)
概要版は、担い手をめぐる状況を次のように整理しています。
◆ 医療・介護・福祉分野の有効求人倍率は高水準で推移し、特に介護で人手不足が深刻化 ◆ 地域やサービス類型によって異なる担い手の確保・配置状況 ◆ 専門職種の養成過程における入学者数が減少し、将来の専門職種の人材確保が困難になるおそれ
(出典:厚生労働省「令和8年版厚生労働白書 概要」4ページ)
本文(第1部第1章、12ページ)は、2025年度の有効求人倍率を、看護関係職種2.10倍、介護関係職種3.98倍、障害福祉関係職種3.28倍、全職業計1.10倍と記載しています。推移は図表1-2-1のとおりです。
2024年度は一般病院の過半、介護・障害福祉の約4割が赤字
白書は、公定価格でコスト増を転嫁しにくい構造を説明したうえで、経営状況を次のように書いています。
2024(令和 6)年度の経営状況をみると、一般病院では、急性期に分類される病院を中心に赤字となっている医療機関の割合が過半を占めている
介護事業所や障害福祉サービス等事業所においても、約 4 割の事業者が赤字となっている
(出典:厚生労働省「令和8年版厚生労働白書」第1部第1章、18ページ)
同じページの注は、赤字の割合を次のように書いています。
厚生労働省「令和 7 年度介護事業経営概況調査」によると、令和 6 年度決算において赤字となった介護サービス施設・事業所数の割合は、全サービス平均が 37.5%、居宅サービスが 35.6%、施設サービスが 44.8%、地域密着型サービスが 34.8%となっている。
(出典:厚生労働省「令和8年版厚生労働白書」第1部第1章、18ページ)
介護職員の平均給与額は31.4万円、全産業平均は39.6万円
賃金については、次のように書かれています。
介護・福祉分野では、賃金水準の低さが、人材の確保や就業の継続を考える上での課題として指摘されている。厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によれば、2025(令和 7)年度の平均給与額*23 は、介護職員は 31.4 万円、障害福祉関係分野の職員は 31.9 万円であり、全産業平均 39.6 万円と比べて低い水準にとどまっており、業務の専門性や責任の重さを踏まえると、賃金水準に対する納得感が得られにくい場合も少なくない
(出典:厚生労働省「令和8年版厚生労働白書」第1部第1章、26ページ。「*23」は注の番号)
令和8年度の臨時報酬改定で、最大月1.9万円の賃上げが実現する措置
白書は、通常3年ごとの定例改定を待たずに2026(令和8)年度の臨時報酬改定が行われたと記載し、介護報酬は+2.03%、障害福祉報酬は+1.84%の引上げが行われたとしています(第1部第1章、28ページ)。図表1-2-19には、次のように書かれています。
※合計で、介護職員について最大月1.9万円 (6.3%)の賃上げ(定期昇給0.2万円込み)が実現する措置。
※ 合計で、福祉・介護職員について最大月1.9万円(6.3%)の賃上げ(定期昇給0.6万円込み)が実現する措置
(出典:厚生労働省「令和8年版厚生労働白書」第1部第1章、30ページ(図表1-2-19。上が介護報酬、下が障害福祉報酬))
2040年に向けて85歳以上は約300万人増、生産年齢人口は約1,100万人減
概要版は、2040年に向けた人口構造の変化を次のように書いています。
・85歳以上人口:2025年→2040年で約300万人増 ・生産年齢人口:2025年→2040年で▲約1,100万人
(出典:厚生労働省「令和8年版厚生労働白書 概要」6ページ)
白書は、政府が2018(平成30)年に実施した推計によれば、2040年時点の医療・介護・福祉分野の必要就業者数は約1,070万人とされ、全就業者の18〜20%を占める規模になると記載しています(第1部第1章、54ページ)。あわせて、生産性向上によって単位時間当たりのサービス提供量が改善すれば、より少ない人材で対応できる可能性も示唆されていると書いています。
介護費用は2024年度に約12.1兆円、介護保険料は2040年に約9,200円の見込み
第2部第6章は、介護費用の見通しを次のように書いています。
介護費用も増大しており、2000 年度の約 3.6 兆円から、2024(令和 6)年度には約 12.1 兆円となり、高齢化が更に進行する 2040(令和 22)年には約 25.8 兆円
(出典:厚生労働省「令和8年版厚生労働白書」第2部第6章、306ページ)
介護保険料については、次のように書かれています。
また介護費用の増大に伴い、制度創設時に全国平均 3,000 円程度であった介護保険料は、第 9 期介護保険事業計画期間(2024 年度から 2026 年度)においては、全国平均 6,225 円になっており、2040 年には約 9,200 円になると見込まれている。
(出典:厚生労働省「令和8年版厚生労働白書」第2部第6章、307ページ)
第2章はICT・AI・ロボットの活用、生産性向上は「省力化が目的ではない」
概要版は、この分野での生産性向上の考え方を次のように書いています。
◆これらの分野における生産性向上は、単なる効率化・省力化が目的ではなく、業務の進め方や役割分担を見直し、業務効率化による負担軽減を図りながら、・ 創出された時間や人的資源を、直接的なケア・支援等に再配分し、サービスの質や安全性の向上を図るとともに、・ 働きやすい職場環境の実現を図り、人材の確保や定着につなげることにより、限られた人材の下でも持続的なサービス提供の確保を目指すもの。
(出典:厚生労働省「令和8年版厚生労働白書 概要」7ページ)
白書は、令和7年度効果検証等調査で、生産性向上推進体制加算を算定している事業所の介護職員1人当たりの月平均残業時間が4.69時間と、全体平均の6.80時間より低い水準だったと記載しています。人員配置基準の特例的な柔軟化を適用している施設では1.33時間とも書かれています(第1部第2章、88ページ)。
テクノロジー導入への国民の受容度は「7割以上が肯定的」
厚生労働省が2026年1月から2月に実施したアンケート調査(令和7年度少子高齢社会等調査検討事業、有効回答3,000件)について、概要版は医療分野・介護分野のいずれにも同じ記載を置いています。
◆ テクノロジー導入への国民の受容度は高い(7割以上が肯定的※)。
(出典:厚生労働省「令和8年版厚生労働白書 概要」10ページ。※は「賛成だ」と「やや賛成だ」を足した割合)
まとめは「現場の主体的な業務改革と一体となって初めて効果を発揮」
テクノロジーは導入するだけでは成果は得られず、現場の主体的な業務改革と一体となって初めて効果を発揮
(出典:厚生労働省「令和8年版厚生労働白書 概要」11ページ)
第2章の末尾のコラムは、2040年頃の現場の姿を想像した例を紹介しています。白書自身が、このコラムは将来像の一例で、現行制度に基づくものではなく、2026年時点で導入・検討されていない内容も含むと注記し、コラムの図は生成AIを活用して作成したイメージ図だとしています(概要版12ページ)。
第2部は10章立て、診療報酬は2カ年平均でプラス3.09%
第2部「現下の政策課題への対応」は、働き方改革、多様な働き手の参画、自立した生活の実現、年金、医療関連イノベーション、医療・介護、健康で安全な生活、障害者支援、国際社会への貢献、行政体制の整備の10章です(本文ページの目次)。
このうち第6章は、2026年度の診療報酬改定について次のように書いています。
2026(令和 8)年度診療報酬改定では、施設類型ごとの費用構造や経営実態を踏まえた医療機関等の経営の改善や、2026 年度と 2027(令和 9)年度にそれぞれ 3.2%分のベースアップの実現が可能となるような対応をはじめとした、必要な改定を行うため、2カ年平均でプラス 3.09%という水準の本体改定率を確保した。
(出典:厚生労働省「令和8年版厚生労働白書」第2部第6章、305ページ)
白書は年次行政報告 介護保険の見直しは介護保険部会で議論されている
厚生労働白書は、厚生労働行政の年次報告です。報道発表資料は、令和8年版が平成13(2001)年の発刊から数えて25冊目になると書いています。白書は現状と施策を報告するもので、ここで新しく制度が決まるわけではありません。
白書は、2027(令和9)年度から始まる次期(第10期)介護保険事業計画期間に向けて、社会保障審議会介護保険部会で介護保険制度の見直しの議論が行われ、2025年12月に「介護保険制度の見直しに関する意見」が取りまとめられたと記載しています。この取りまとめを踏まえた「社会福祉法等の一部を改正する法律案」は第221回特別国会に提出され、2026年6月に成立した(令和8年法律第51号)と書かれています(第2部第6章、307ページ)。
介護保険部会での議論の経過は介護保険制度の見直しの経緯、診療報酬改定の決まり方は診療報酬はどうやって決まるのか、令和9年度の障害福祉サービス等報酬改定の議論は検討チームの論点整理までで、それぞれ一次情報を確認しています。
今後の予定
- 第10期介護保険事業計画期間が始まる(白書は2027年度からと記載)
予定は資料の記載にもとづくもので、変わることがあります。
経過
日付と出来事の一覧を開く(2件)
- 「経済財政運営と改革の基本方針2026」を閣議決定(白書が注で引用)
- 令和8年版厚生労働白書を閣議で報告し、公表(報道発表資料の日付)
出典
- 厚生労働省「「令和8年版厚生労働白書」を公表します」(報道発表資料)(2026年10月11日取得)
- 厚生労働省「白書、年次報告書」(2026年10月11日取得)
- 令和8年版厚生労働白書 これからの医療・介護・福祉の現場で働くことを考える(本文)(2026年10月11日取得)
- 令和8年版 厚生労働白書 概要(PDF)(2026年10月11日取得)
- 令和8年版 厚生労働白書 第1部 はじめに(PDF)(2026年10月11日取得)
- 令和8年版 厚生労働白書 第1部第1章(PDF)(2026年10月11日取得)
- 令和8年版 厚生労働白書 第1部第2章(PDF)(2026年10月11日取得)
- 令和8年版 厚生労働白書 第2部第6章(PDF)(2026年10月11日取得)